バトラー先生 ただいま診察中

  1. しつけは“お手本”のマネから
  2. 犬同士上手に付き合うには
  3. 食べない原因飼い主にあり
  4. 後悔する前に聞き直そう
  5. 犬の足は良く乾かして
  6. 仲間の犬   
  7. 犬の爪切り  
  8. 運動の大切さ  
  9. 石焼き芋
しつけは“お手本” のマネから
生後5ヵ月になるラブラドルレトリバーのラブのしつけがうまくいかないということで、Aさん一家が家族みんなで病院に来ました。
 ラブは生後2ヵ月を過ぎたときに、Aさん宅にやってきました。映画やテレビに出てくる数多い犬の中で、ラブラドルが人のいうこともよく聞いておとなしそうで、とてもかっこよかったからです。もちろん、ラブを飼う前に、犬に関する本を数多く読み、犬のことや訓練の仕方について家族で勉強しました。
 「さあ、完壁!」と思ったのに、実際飼ってみるとうまくいきません。トイレの場所は覚えない、家具をかじる、小学生の子どもたちにはうなるという始末で、Aさん一家は途方に暮れてしまったのです。
 犬を飼うということはスポーツと同じで体で覚えることです。例えば、水泳は本を何冊読んでも、畳の上でフォームをいくら研究しても泳げるわけではありません。体を水の中に入れ、顔をつけ、体を浮かせる、ということができてやっと泳ぎの初めです。さわり方、なで方、押さえ方。声の出し方、力の入れ具合など、書いてみるととても難しそうですが、そんなことはあリません。上手な人を見習えばいいのです。“百聞は一見に如かず”です。
 それをどこで見るかということですが、動物病院やしつけ教室だけでなく自宅の近所だって、お手本はあるはずです。近所を犬と散歩している人を見て、人犬双方に安心感を感じることができれば、その人を手本にしてじっくり観察すればよいでしょう。お手本にならない場合でも、どのあたりを変と思ったのかは大変重要なことです。犬はいうことを聞いているけれど飼い主が乱暴そうだとか、本で得た知識と心に浮かんだ感覚を照らし合わせてみることは大事なことです。
 人も犬も動いたことに理屈はつきますが、理屈が先にあって動くわけではありません。
(いもと ふみお=井本動物病院院長、ヒトと動物の関係学会監事)
毎日新聞 2003年3月24日掲載
犬同士上手に付き合うには
「うちの子、他の犬たちと仲良くなれないのでしょうか」
 1歳になるコーギーでオスのポッポを飼っているJさんが相談に来ました。ポッポは人には愛想が良くてどんな人にもうれしそうに近づいていくのに、相手が犬となるとウーツとうなるし、相手によっては、散歩中遠くに見つけてもワンワン吠えるというのです。「相手の人や犬にも悪いし、こちらもなんだかこそこそ散歩しなくてはいけないようだし、この子もお友達ができなくてかわいそうだし、、、」と悩みは多そうです。
 犬と犬が仲良くなるためには、まず犬としての挨拶ができないといけません。犬たちはどんなに見知った犬でも知らない犬同士でも挨拶をします。犬の挨拶はお互いの情報交換ですから非常に重要です。自分より強いか弱いか、オスかメスか、元気そうか、発情しているかなど相手のことをできるだけ知り、それによって相手と自分の関係を決めます。
 犬の挨拶の中で重要な行動に、「お互いカのにおいを嗅ぎ合う」というのがあります。最初に近づいた犬の方が相手の犬を嗅ぎたがる傾向にあります。相手に関心があるのです。頭からシッポの方に向かって嗅ぎ、肛門や性器の部分を嗅ぎ合います。
 ところが、この行動をとろうとしたりとっている最中に、飼い主が犬のリードをグイッと引っ張ることがあります。飼い主としては自分の犬や相手の犬を気遣ったりけんかをしないようにと思っているのでしょう。でも、相手がどんな犬か確かめようとしている矢先に、いきなり後ろに引っ張られるのですから、犬にとっては犬に近づくといやなことが起こるという条件をつけられているのです。そのために犬嫌いになってしまうこともあります。「では、どうすればよいのでしょう」とJさん。ゆっくり相手を確かめあう時間を作ってやればよいのです。しかし、社会化ができていない犬や自分の犬を信頼していない場台には難しいことですが、、、。
(いもとふみお=井本動物病院院長、ヒトと動物の関係学会監事)
毎日新聞 2003年3月17日掲載

食べない原因飼い主にあり
 自分の飼っているペットが、食事をしなかったり食が細いと心配です。たとえ元気に動いていても気が気じゃないですね。食べない原因を探ることはそっちのけで、食べさせることに一生懸命な方もいます。
 犬を飼っている方の中に見かけるのは、次のような方です。
 犬が食事をするそばにいて「どうして食べないの。それだけしか食べないんじゃ病気になってしまうでしょ。そのごはん、嫌いになったの?じゃあ、こちらの方がおいしそうだからこれを食べなさい」と別のものを与えたりします。それにもちょっと口をつけただけでプィッと横を向くと「じゃあ、これならどう、食べてみて」。よくある光景です。
 体の具合が悪くて食欲がないときには早く治療しなければなりませんが、体調は普通なのに食べないことだってあるのです。
 Rさんの場合がそうでした。「先生。この子食が細くて困ります」。Rさんはほとほと疲れたのいう顔をして見えました。「この子、絶対どこか具合が悪いんです」
 診察台の上のプードルのランランは、目の輝きもありますし、口やおなかに問題があるようでもありません。体の診察が終わって尋ねました。「ランランの食事のとき、Rさんはどうしているのですか」「そりゃ、そばで見ていますよ。心配ですから」。先のような光景が繰り広げられていたのです。
 「食事をしているそばに立ったり見つめていられたりすると、ランランは気になって食べられないんですよ。ほっといてくれないと安心できないのです。それに、食べないからといって、よいにおいのする別のものが出てくるんじゃ、それが出てくるまでいつまでも待ちますよ」
 犬の駆け引きに負けないためには、自分の心に打ち勝つ必要があるかもしれません。
(いもと ふみお=井本動物病院院長、ヒトと動物の関係学会監事)
毎日新聞 2003年3月3日掲載

後悔する前に聞きな直そう
 「わたしの決めたことはよかったのでしょうか」
 初めて電話をくれた方からいきなり切り出されました。受話器の向こうから思い詰めた声が聞こえてきます。どうにか事情を聞き出したところ、次のようなことでした。「14歳のビーグルで、心臓が悪くて治療していた。そこに皮膚に腫瘍ができた。その手術を明日に控えているのだけれど、心臓の悪い犬に手術を受けさせることが良いのかどうか、今になって迷っている」
 この方は、2週間ほど前にその手術をすることを決めたそうですが、そのときは、思い悩むようなことは思ってもみなかった、とも言われました。手術が目前になって、いろいろなことが頭をよぎり、不安にかられたのでしょう。
 重大なことを決めた後、これでよかったのかとあれこれ考えることは、別に不思議なことではありません。また、気持ちが弱いせいでもありません。誰だってそういう気持ちになるものです。ただ、決定するのに獣医師が説明することをよく理解しないままうなずいていたり、決定することが重要な事柄と考えなかったりして、後でなんということを決めてしまったのだろうと思い悩むことだけは避けたいものです。「皮膚の腫瘍の種類はなんでしょうか」という私の質問に、この方の返答は「覚えてない」というものでした。大事に思っている犬や猫が、どういう病気なのか。そのままにしておくとどうなるのか。麻酔や手術の危険性は?などあらかじめ知っておくべきことはいっぱいあると思います。
 それらを、ある程度理解し気持ちが納得するまで、何回も聞き直すことは恥ずかしいことではありません。メモしてもよいのです。むしろ、飼い主として積極的に行うことが必要だと思います。
(いもと ふみお=井本動物病院院長、ヒトと動物の関係学会監事)
毎日新聞 2003年2月24日掲載
犬の足はよく乾かして
 「エーッ、犬の足って洗っちゃいけないんですか。それじゃ、床が汚れるじゃないですか」。ビーグルのジャックを飼っているPさんは不満顔です。
 「洗ってはいけないということではないのです。洗う限りはしっかり乾かして下さいということなんです」
 ジャックが前足の指の間をいつもなめており、その部分の毛の色が黒く変色したということで来院されました。前足の指間をなめる原因も毛の色が黒く変色したことも、足を洗った後、生乾きのままにしておいたことが原因です。
 散歩を終えて家の中に犬を上げるときに、犬の足を洗う人は大勢います。洗うことは良いのですが、指の間までしっかり乾かさない方が多く見受けられます。そういう場合、犬としては自分の足の生乾きが気になり、舌で水分をなめ取ろうとします。そういうことが続いているうちに、口の中にある細菌が指の間に感染し、指間が真っ赤になったり、趾間の毛の色が茶色や黒くなったりします。
 散歩の後の犬の足を何もしないで、家に上げることに抵抗感がある人は大勢います。土足で家の中に入られるような感覚が生まれるでしょう。どうすればいいのでしょうか。
 天気の良い日にアスファルトやコンクリートの上を散歩するのであれば、乾いたきれいなタオルでふくだけで十分です。それでも気持ちが治まらないという人は、足の肉球(足の裏の黒い部分)を固く絞ったきれいなタオルでふき、その後乾いたタオルでまたふくということにすればよいでしょう。ただ、指間をぬらさないように気を付けなくてはいけませんし、雑巾も細菌の巣ですから使わないようにしましょう。
 もちろん、雨のときは泥んこの道を歩いたときは足を洗いましょう。 しかし、くれぐれもしっかり乾かすことが大事です。
(いもと ふみお=井本動物病院院長、ヒトと動物の関係学会監事)
毎日新聞 2003年2月3日掲載
仲間の犬が名指導
  Tさんがちょっと胸を張って診察室に入ってきました。一緒に連れてきたゴールデンレトリバーのブービーは見違えるような良い子になっています。「ずいぶんおとなしくなりましたでしょう」。数ヶ月前のドタバタしたところがすっかりなくなり、よく訓練されている犬の雰囲気を漂わせています。Tさんのもう一匹の飼い犬のビーグルでメスのジェシカの横に並んでオスワリをしています。「先生のいう通り、ジェシカを徹底して立てていたらこんなにおとなしくなっちゃって、ほんとに楽にしつけができました」。
 5ヶ月前、Tさんがもう一匹犬を飼いたいという相談に見えられました。「ジャシカを優先しないと将来犬同士の争いが絶えませんよ」とお話をしたのです。その上、Tさんが新たに飼おうと思っている犬は、はじめに飼った人が手に負えなくて手放したそうで、Tさんがペットショップの片隅にいるのを見かねて飼おうとしていたのです。
 犬にとって生後3週から10週までの時期は、犬としての社会性をつけるためにとても大切な時期です。
その時期を母親犬や兄弟犬と過ごせてない犬は、犬としての社会性がつかないのです。Tさんの観察したさまざまな行動から、その犬の社会性の欠如が予想されましたので、あまり勧められないとは言ったのですが、Tさんはもう決心していたのでしょう。しばらくしてその犬を飼いはじめたのです。
 ところが、私の心配は杞憂に終わりました。Tさんは新しく来たブービーに目もくれずにジェシカを徹底的に優先したのです。するとブービーはジェシカのまねをし、段々おとなしくなったということです。さらにブービーはジェシカを見習いながら社会性も身につけていったようです。ジェシカは元々社会性もしっかりしている上に、訓練もよくされていました。
 人間が犬の社会性を教えるのは至難の業なのですが、しっかりした犬はいとも簡単にやってのけてしまいました。
(いもと ふみお=井本動物病院院長、ヒトと動物の関係学会監事)
毎日新聞 2003年1月13日掲載
犬の爪切り
  「この間散々だったんです。ピコの爪を切ろうとしたら深爪したみたいで、爪の先から血が出るわピコは逃げるわで、居間が血だらけになっちゃって。ふだんから足を触られるのはいやがっていたので、それをなんとか押さえて切ったのに。その後、しばらくピコが私に寄ってこなくて、大変でした」。Bさんは犬の爪切りはもうこりごりという顔つきです。
 よく散歩する犬であれば爪を切る必要はほとんどないのですが、あまり歩かない犬や、指が広がってしまっている犬の場合には、爪を定期的に切ってやる必要があります。
 犬の爪の中には血管が通っています。その血管を傷つければピコのように出血しますし、痛みも相当なものだと思います。爪の白い犬の場合、よく見ると赤く血が通っている血管を見ることができますので、血管の先端を避けて爪を切ることができます。
 しかし、中には爪の黒い犬もいます。黒い爪では血管を確認することができません。
 この場合、爪のカーブや爪と着地面の具合から切る場所を決めるのですが、慣れていないと難しいものです。自信が持てるまではちょっとずつ切るかヤスリでこする方がよいかもしれません。
 ただ、爪は単に切ればよいというものでもありません。爪の切り口が斜めにならないよう切らなくてはなりません。爪の先が斜めになっていては、指に悪い影響を与えるからです。
 爪を切る前に飼い主の方がマスターしておくことは、「犬の4本の足を自由に触ることができる」ということです。自分の犬の足を自由に引っ張ったり触ったりすることができるということは、犬は安心して飼い主に身を任せているということですから、切る側も落ち着いて爪を切れるというものです。 
(いもと ふみお=井本動物病院院長、ヒトと動物の関係学会監事)
毎日新聞 2002年12月23日掲載
運動の大切さ
 Nさんが不安そうに柴犬のジルを抱いて立っています。「車の後ろの座席に乗せたいのですが、カーブを曲がった時からおかしいんです。キャンと鳴いた後、後ろ足をずーっと上げているんです・・・」
 ジルが左足を上げています。太っていますので片足で立っているのは辛そうです。
 そーっと左腰を触ると左腰の骨盤あたりがやや膨らんでいます。「レントゲンを撮りましょう」。検査の結果は左股関節の脱臼でした。左足の大腿骨頭が股関節の外に出ていました。
 車が曲がるときに、後部座席に立っていたのでしょう。車の揺れとジルの踏ん張る力の関係で脱臼してしまったと考えられます。運が悪いとしか言いようがありません。
 しかし、ジルの運動不足も遠因のひとつと言っても言い過ぎではないです。運動不足は体重を増加させますが、筋力や靭帯も衰えさせます。
 思わぬ方向から力がかかってもそれを受け止める力やしなやかさがあれば、ケガは少ないのです。ふだん走らない犬を、楽しそうだからといってボールやフリスビーなどで遊んで、腰や足を痛めることはよくあることです。ほとんど運動しない人が、運動会だからといきなり張り切って走り、アキレス腱を切ったなどということと同じです。
 ジルには麻酔をかけて整復をしました。整復がうまくいき足が元に戻っても簡単にはずれるような場合には、外科手術をしなくてはなりません。元に戻った左足をぐいぐいひっぱりましたが、幸にしてはずれません。整復した足を包帯で体にグルグル巻いて2週間ほど使わないようにした後、普通に歩けるようになりました。
 二度と同じような事故がないよう、運動のためにNさんはジルと散歩のスピードを速くしたそうです。そういえば、気のせいかNさんもジルもちょっとスマートになってきました。 
(いもと ふみお=井本動物病院院長、ヒトと動物の関係学会監事)
毎日新聞 2002年12月10日掲載
下痢対策の石焼き芋
イシヤーキイモー、ホツカホカノ〜イシヤ〜キイモ〜」。遠くで石焼き芋の声が流れました。待合室に座っていたNさんたちのビーグルのビートはピクっと顔を上げ、サッと立ち上がってシッポをうれしそうに激しく振り出しました。
 「この子ったら、あの声に敏感になってしまって・・・」。Nさんがいこにこしながら言いました。「家でも大変なんですよ。あの声が聞こえたとたん、こうやって催促するんですから」。ビートがこんなに石焼き芋の声に反応するようになった原因の一端には、私にも責任があるようです。というのも、ビートは下痢勝ちでしたので、Nさんに「食餌療法としてさつまいもを食べさせましょう」と言ったからです。
 下痢は糞便の水分の量が多過ぎる状態です。腸管の中で消化や吸収、分泌、透過性、運動性が異帯になると、賜の粘膜を通る水分や電解質の流れが乱れて下痢になるのです。
 腸には小賜と大腸がありますが、小腸が原因の下痢と大腸が原因の下痢を一般の方でも区別できる方法があります。一般的に言って、小腸性の下痢では、排便の頻度は正常かやや増加する程度ですが、排便量は多くなり排便する姿勢は普通です。ところが、大腸性の場合には、頻繁に排便しますし便意も催します。また、直腸に問題があるときには排便が困難になる場合があります。
 ビートは大腸性の下痢でしたが、治療として「消化の悪い繊維を与えること」が必要でした。繊維分は糞便の量を増やして水分と結合し、形のある便を作り下痢を改善するのです。繊維分の多いさつまいもには甘みもありますから、ビートはすっかり好きになったようです。ビートの下痢は治っているのですが、「食餌療法続行中」と言いながら、今でもNさんとビートは石焼き芋を仲良く食べていることと思います。
(いもと ふみお=井本動物病院院長、ヒトと動物の関係学会監事)
毎日新聞 2002年12月2日掲載
ちょこっと一言
ブービエ デ フランダース
この犬種は腸が弱い。毎日キチンと観察していると、病的下痢かそうじゃないかが、見極められます。匂いも違います。
病気じゃないのに 便がゆるい時は「おから」もいいですよ〜!
(ひまわり家)

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